コンセプト・リサーチ
コンピュータの圧倒的パワーで収集・生成された膨大な情報・アイデアを機械学習でグルーピングすることにより、人間による作為を排除しながら"コンセプト"へと昇華させ、戦略的な評価を可能にする。
マインドウエア総研では、KJ法やグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA: Grounded Theory Approach)などの伝統的な定性情報分析の考え方を踏まえつつ、先端の大規模言語モデル(LLM: Large Language Mode)を活用し、コンセプトを生成するツールとしてコホネンの自己組織化マップ(Self-Organizing Maps)を使用し、コンセプトの要素間の関係をモデルするツールとしてベイジアン信念ネットワーク(BBN: Bayesian Belif Network)を使用することで、現代的なコンピュータ支援によるコンセプト・リサーチの枠組みを完成させました。
従来、定性情報分析をコンピュータ支援によって行おうする試みは数多くありましたが、そのほとんどはいわゆる「お絵描きツール」であり、バラバラな情報を組織化させてコンセプトを構築する肝心な部分で人間の作為が介在しており、本当の意味でコンピュータ・サイエンスを導入するには至っておりませんでした。
KJ法と一見似たような手法として”MindMap”というのがあって、これは現在、LLMを活用して自動的にマップを作成できるようになっています。しかしながら、それはすでにプレゼンなどのストーリーが作成できている状態から、その骨子を抜き出してマップにするという程度のもので、大量の情報やアイデアから新しい発見を行おうとするものではありません。
KJ法も完璧な手法かといえば、実際そういうことではありません。我々は無批判でKJ法を信奉するわけではありません。KJ法の良さは、グループで行うことにより、メンバー間で一定のコンセンサス(合意)を構築できるところにあります。しかし、それを裏返すと、田中角栄研究で名を上げ、その後、「知の巨人」と称されたジャーナリスト・立花隆氏からは「二人三脚のように非効率」と酷評される一面もありました。
KJ法が流行った1970年代、小学生・中学生の間で「こっくりさん」(Table-turning)という遊びが流行っていました。紙に50音の表を書いて、数人の参加者が共同して人差し指でコインを押さえ、「こっくりさん、こっくりさん、〇〇君の好きな人は誰?」というような質問をすると、コインが自動で50音を移動して答えるというものでした。実際のところは、メンバーのうちの誰かの強い願望(あるいは潜在意識)が反映されて、コインが無意識で動かされるという仕組みのようですが、参加するメンバーにとっては、コインが自動で動くように感じられて、遊びとして面白がるには十分でした。
KJ法もグループのリーダーの力量次第であり、リーダーシップが上手く働かなければ、立花氏が言ったようにまとまりません。つまり、KJ法も「こっくりさん」と同類で、誰かの秘めた思惑に誘導されてまとまります。現実には、人間対人間のかけひきの中で、すべてが行われています。したがって、(立花氏のように)一人でものを深く考えるタイプの人、批判的精神の持ち主にとっては、あまり馴染めない側面があります。
とどのつまり、従来のKJ法は、「昭和の日本の組織」に最適化された人間臭いやり方であり、純粋な”科学的方法"とか"技術”の類ではありません。しかしながら、バラバラな情報を類似性に基づいて集めることによって、情報が整理され、より高次の知識に昇華するという考え方自体は、哲学・論理学的観点からも妥当性があります。マインドウエア総研は、この部分に焦点を当てて、過去25年間、コホネンの自己組織化マップを中心に研究を積み重ねて来ました。その研究は長い間、困難が続きましたが、近年、大規模言語モデルの登場により事態が大きく動き始めました。
現在、我々はとてもすっきりと視界が開けた状態です。先端のデータサイエンスの重大な成果として、定性情報を”計算可能”なベクトル量として表現できることになったおかげで、我々は、自己組織化マップにより、それらのバラバラな定性情報から”コンセプト”を構築し、データマイニング(分析)できるようになりました。
このアプローチは、現在、ドイツの先鋭的なデータサイエンス企業・Stat-upで高く評価され、ドイツをはじめ、ヨーロッパ、中東などの政府機関や大企業、コンサルティング・ファームなどで採用され始めております。