パラメータ感度分析

パラメータ感度分析は、信念(確信度)の更新(エビデンスの伝播)の結果が、モデルのパラメータの値の変動にどれだけ敏感であるかの分析です。モデルのパラメータは、条件付き確率分布のエントリーです。

パラメータ感度分析

パラメータ感度パネルは、パラメータ変数の値での変化に対する仮説変数で感度分析を実行することを可能にします。この感度分析は、仮定されたパラメータのCPT値について、ノードのステートの信念(確信度)を計算するために、次の感度関数に基づきます:
f(t) = α * t + β / γ * t + δ
感度値は、次の関数に基づいて計算されます
f(t)= α* t + β / (γ * t + δ)2

以下の事例(図1)では、 asia.net ネットワークが読み込まれ、パラメータ感度パネル(実行モードの "ウィザード" メニューから利用可能)に入る前にコンパイルされます。ノード "Has bronchitis" が、仮説変数として選択されて、"すべてのステート" がチェックされ、仮説ノードのすべてのステートで分析が実行されます。ノード"Smoker" がパラメータ変数として選択さています。パラメータ変数を選択すると、そのCPT表が、このパネルの下部に表示されます(図1)。

図 1: パラメータ感度分析

CPT表でyes = 0.5 をクリックすることにより、感度関数が、仮説変数の各ステートについての値(信念)を計算するために使用されます。仮説変数のステートが、パラメータ値の変化に対して、どれだけ敏感であるか(すなわち、事例中の選択されたCPYのエントリが、yes = 0.5にある) を表現する2本の線を示すグラフが、パネルの右上隅に表示されます。

このグラフから、我々は、パラメータ値がほぼ0.7の上にあるとき、最高の確率を持つ仮説変数のステートが変化することに気付きます。また、感度関数は、直線であることもわかりまう。"Smoker = yes = 0.5" を仮定して、患者がbronchitis(気管支炎)である信念が 0.45 で、bronchitisでない信念は 0.55.です。これらの点 (0.5, 0.45) と (0.5, 0.55) が、グラフ上に示されています。

感度分析は、極端なCPT値、すなわち、0と1では実行できません。

仮説ノードがたくさんのステートを持つ場合、感度関数のラインが重なり合うので、グラフが複雑になります。グラフの情報表(左上)でステートを選択することにより、選択されたステートの感度関数のラインだけがグラフ中に表示されます。再びすべてのラインを見るには、パラメータ変数の表で CPT インデックスを選択します。

パネルの中ほどにある(図 1a, 1b)表は、パラメータ変数コンボ内で選択されたノードの CPT 表です。 表中のセルを選択すると、選択されたcpt値を用いて感度分析が実行されます。ラジオ・ボックス "MIN SV" および "MAX SV" は、すべてのcptインデックスに関する感度値を表すカラー・チャート(色グラフ)を見ることを可能にします。

 

Minimum Sensitivity Values
図 1a: DyspnoeaのCPT 表と最小感度値を示すカラーチャート.


最小感度値のカラーチャートが選択された場合(図 1a)、赤色が濃いほど対応するcpt値で最小感度値がより低くなります。

Maximum Sensitivity Values
図1 b: DyspnoeaのCPT 表と最大感度値示すカラーチャート.

最大感度値のカラーチャートが選択された場合、青色が濃いほど対応するcpt値で最大感度値がより高くなります(図 1b)。
カラーチャート中のセルを指すと、 MIN/MAX 感度値の実際の値を表示します; それをクリックすると、対応するcptインデックスを選択して、感度分析を実行します。
"MIN SV" と "MAX SV" は、すべてのステートで感度分析を実行することを選択したときだけ有効です。そうでない場合は、cpt値は1つの感度値に対応するので、それらの値を示すカラーチャートが表示されます。

 

ケース・ファイルをインポート

ケース・ファイル に格納されたケースまたはデータ・ファイルに格納されたケースの集合で、パラメータ感度分析を実行することが可能です。ケース・ファイルは、単一のケースを表現し、一方、データ・ファイルは、与えられたネットワークについての多数のケースを表現します。

"ケース・ファイル" ボタンは、ファイルをウィザードにインポートし、ケースを選択して、それらをドメイン中のエビデンスとして入力できるようにします。これで、ファイル中の各ケースについて感度分析を実行できます。図 2 では、ケース・ファイル "asia-cases1" がインポートされ、表として表示されています。ケースをクリックすると、ドメインにエビデンスとして入力され、上図(図1)に示すように感度分析が実行されたあと、感度値とグラフ中の線が異なっています。それは新しいエビデンスが考慮されたからです。感度分析は、入力されたエビデンスを持つ仮説ノード上で実行できます。

図 2: ケース・ファイルからのエビデンスによる感度分析.

感度分析は、投入されたエビデンスを持つ仮説ノードでは実行できません。エラーメッセージを避けるには、エビデンスを持つノードのノード名が、仮説変数コンボ内で h (e) によってマークされます(図 2a)。

Hypothesis Combo
図 2a: 仮説変数コンボ

ケースでの実行

ウイザード内でケースが読み込まれた場合、たくさんのケースでパラメータ感度分析を行うことができます。ケース表ですべて (Ctrl-A) または一部のケースを選択し (図 2b)、選択された仮説とパラメータで感度を計算すると、ケースでの結果を表示する情報パネルないに表が生成されます。表中の各行は、各ケースでの、仮説の選択されたステートについてのパラメータ感度分析の結果を示します。 すべてのケースで仮説のすべてのステートに関する感度を計算することはできません。計算が失敗したケース(たとえば、仮説でエビデンスが投入された場合)については、結果が示されません。  

Accross cases
図 2b: ケースで計算された感度.

情報表は、感度値に加えて、すべてのケースで修正されるパラメータ重要度値も表示します。最終行のパラメータ重要度値は、すべてのケースを通過した後に計算された最終の値です。 

情報表の行を選択すると、選択されたケースでの感度関数グラフが表示されます。

ネットワークを開く

"感度集合グラフ・パネル" は、ネットワーク上で直接、パラメータ感度分析の結果をビジュアルに切り取る助けをするツールです。これは"パラメータ感度パネル"内の "ネットワークを開く"ボタンを押してアクセスできます。

すべてのノードが3つに分かれ、それぞれの分割が異なる色で塗られます。ノードの左から、青、赤、緑の色が使用され、それぞれの色は異なる値を表します。

各色のトーンは、それらが表現している値の高さを示します。最大と平均の感度値(青、緑)が高い数字の場合、濃い色になります。最小(赤)の場合、逆が適用されます。 値が 0 の場合、色は白く退色します。黄色は、仮説ノードにエビデンスが入力されていないか、またはそのノードのCPT表の値が0と1である、といういずれかの理由によって、そのノードについて感度値が計算できないことを示します。

図 3: 感度集合グラフ 

図 3 は、"asia" ネットワークの事例を示します。この事例では、どのノードが最高の値を持ち、どれが0の値か0に近い値を持つかを直ちに可視化します。ノード"Has Lung Cancer"をポインティングすることによって、 そのノードの最大、最小、平均値が、その名前とラベルとともに、パネルの下部に表示されます。ネットワーク上でノードを選択すると、 "パラメータ感度パネル"でパラメータ変数として、それが設定されます。   


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翻訳者:多田くにひろ(マインドウェア総研