ジャンクション ツリー

ベイジアンネットワークでの推論とインフルエンス・ダイアグラムでの推論は,ジャンクション・ツリーと呼ばれる二次構造で実行されます.ネットワークのジャンクション・ツリーは,編集モード から 実行モードに切り替えるときに生成されます.ネットワークのジャンクション・ツリーは, 表示メニューのジャンクション・ツリーを表示項目を選択して開かれる別のウィンドウに表示されます.

図1は,Asia ネットワークのジャンクション・ツリーを示します.

図 1: Asia ネットワークのジャンクション・ツリー

 

ジャンクション・ツリーが何であり,どんなことに使用できるかを理解するには,次のような記事があります.

また重要なことは,矛盾するエビデンスを検出して究明するためにジャンクション・ツリーがどのように使用できるか,ということです.

ジャンクション・ツリーとは何か?

ネットワークでの推論は,そのジャックション・ツリー表現でのメッセージ伝達の方法で行われます.ジャンクション・ツリーは,モラリゼーション(道徳化)と三角化のプロセスに関係する変換を通して得られます.それは,ベイジアンネットワークの正確な推論が,(暗黙的または明示的な)モラリゼーションと三角化を必要とすることを示します.

モラリゼーションのステップでは,まず共通の子を持つ接続されていない親ノードの各ペアの間に無向リンクを追加します.つぎに,すべての有効リンクを無向リンクに変換します.このプロセスの結果は,いわゆるモラル・グラフと呼ばれています.

三角化のステップは,結果のグラフが三角化グラフ(または弦グラフ)であるようなモラル・グラフに(無向)リンクを追加します.無向グラフとは,弦(すなわち,パスの非連続ノード間のリンク)なしで,3より大きい長さの巡回を含まない(すなわち,最初と最後のノードが同一であることを除く,離散ノードのパス)弦グラフです.グラフの最大の完全に接続されたコンポーネントまたはサブ・グラフ(すなわち,ノードの各ペアが互いに接続sれている)をクリークと呼びます.

ジャンクション・ツリーのノードを形成することは,三角化グラフのクリークです.各クリークは,クリークのノードのステート空間のデカルト積にわたる指標のテーブルに関係づけられています .したがって,各クリークは,クリークのすべてのノードにわたる関数の表現を保持します.すなわち,クリークのノードにわたる結合確率分布が,クリーク・テーブル内で表現されます.

明らかに,各クリークは,より多くのノードが追加されるので,サイズが指数的に成長するテーブルに関係づけられているので,我々はクリークをできるだけ小さくしたいのです.しかしながら,さまざまな三角化の数は, 階(はネットワークのノード数)まであり得えて,結果のジャンクション・ツリーの表現と計算の複雑さは,さまざまな三角化でかなり変化するので,最適な三角化を発見するのはとても難しいかもしれません.実際,この最適化問題の複雑さは,NP-hard (適正な時間内では不可能なことを示す数学用語)に属します.

Hugin Decision Engine (HDE) は,さまざまな三角化アルゴリズムを提供しており,それらのほとんどは,greedy one-step look ahead (欲張りワンステップ先読み)ヒューリスティクスに基づいています.多くの場合,しかながら,最適な(近似的最適な)三角化が,実際には発見できます.HDEは,(近似的)最適三角化の手法を提供しており,それは多くの場合,他の(ヒューリスティックな)三角化手法を用いて生成されるよりも,かなり複雑さの低いジャンクション・ツリーの結果を提供します.詳細は, コンパイル 機能の説明を参照してください.

ベイジアンネットワークが切断されると,ジャンクション・ツリーも切断されることに留意してください.切断されたジャンクション・ツリーは,ジャンクション・フォレストとも呼ばれます.

ジャンクション・ツリーでの推論

上記で言及されたように,ネットワークでの推論は,ネットワークのジャンクション・ツリー表現でのメッセージ伝達に依拠します.

推論ステップ(プロパゲーション=伝播とも呼ばれる)は,2つの主要なフェーズからなります.

あるクリークCは,Cが他の隣合うどのクリークからメッセージを受け取り,それがまだDに送られていないときは,隣のクリークDにメッセージを送ることができます.

クリークCから隣のクリークDへのメッセージは,CとDの両方のメンバーであるノードでのマージナル・テーブル(周辺表)で構成されます. より正確に言えば,メッセージは,DのメンバーでないCのノードに対応する次元を除去したCの表から計算されます.一般的に,除去は総和(加重)で実行されます.もっともよくあるコンフィギュレーション(most probable explanation (MPE)とも呼ばれる)とそのコンフィギュレーションの確率を計算するために,除去は,しかしながら,最大化を用いて実行されます.

ツールと諸機能

ジャンクション・ツリーのクリークは,(図2のような)長方形で表示されます.長方形の上部は,クリークのメンバーであるノードの一覧からなり,下部はそのクリークを根元とするサブ・ツリーで入力されたエビデンスに関する矛盾測度を示す矛盾バーからなります. データの矛盾分析の詳細は,データの矛盾分析 の節を参照してください.

図 2: Asia ジャンクション・ツリーのクリーク

クリークは,左マウスボタンをクリックして選択できます.クリークの縁を選択するとグレーから黒に変わります.シフトキーを押しながらクリックして,複数のクリークを選択することが可能です.1つまたは複数のクリークを選択すると,選択されたクリークのノードがネットワーク・パネルで選択されます.
ジャンクション・ツリー・パネルは,その他たくさんの機能を提供します.それらは,下部のツールバーとプルダウン・メニューで利用できます(図3).

図 3: Asia ジャンクション・ツリーのクリーク

プリンタ・ボタンは,ジャンクション・ツリーを印刷することを可能にします.ジャンクション・ツリーは,プリンタまたはファイルに出力できます. ネットワークの印刷と同様,印刷ダイアログ中の"ジャンクション・ツリー"タブで適切な拡大縮小率を設定することにより,印刷を複数のページに分割することができます.

拡大鏡ボタンは,よりよい表示を得るためにズームイン,ズームアウトの機能を提供します.

記号のボタンは,異なるクリークをツリーのルートとして選択することを可能にします.この機能は,正確に1つのクリークが選択されているときだけ可能です.異なるクリークをルートとして選択することは,ローカルな矛盾を調査することに役立ちます.

記号のボタンは,全体の矛盾測度が正値であるときに使用できます.詳細は,データの矛盾分析 を参照してください.

記号のボタンは,通常の総和伝播機能を提供します.

記号のボタンは,このページとデータの矛盾分析の節と同じ情報を提供するヘルプ・ページを起動します.

エビデンスは,エビデンス・ノードをハイライトさせる(それらのノード記号の色がエビデンスの色に変わる)ことで示されます.エビデンス・ノードを表示するために,2つのモードがあります.エビデンス・ノードのすべてのインスタンスがハイライトされるか,エビデンスが入力された場所のクリーク内に現れるそれらのインスタンスのみのいずれかです.(ノードは複数のクリークのメンバーであり得ることに注意.)好みの表示モードの選択のために,プルダウン・メニュー(上記参照)が提供されています.


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翻訳者:多田くにひろ(マインドウェア総研