Pearl (1988)によるd-分離のルールは,ベイジアンネットワーク中の変数間の従属性と独立を決定するために用いられる.これは,たとえば,(構造的な) モデル検証や説明のためにとても便利である.ネットワークが実行モードにあるときHuginでのd-分離 を実行することができる.
d-分離のルールを使用するには,基本的な3種類の接続を熟知する必要がある.
X → Y → Z(シリアル接続): Yのステートが知られていない限り,接続を通して情報が伝えられる.事例: もし我々が,降雨 (Y)を観察すると,黒い雲があること (X) は,濡れた芝生 (Z)に関するどのような仮説(または信念)とも無関係である.一方,雨が降っているかどうかを知らないなら,黒い雲の観察は,雨に関する我々の信念を増強させ,それは濡れた芝生に関する我々の信念を同様に増強させる.
X ← Y→ Z (ダイバージング接続): Y のステートが知られていない限り,接続を通して情報が伝えられる.事例: 降雨(Y) を観察して,芝生が濡れている (X)なら,芝生が濡れている (X) という追加の情報は,ラジオの天気報告 (Z) に関して何も我々に教えることがない.一方,雨が降っているかどうかを我々が知らないなら,ラジオでの雨の報告は,雨が降っていることの我々の信念を増強させ,それは濡れた芝生に関する我々の信念を同様に増強させる.
X → Y ← Z(コンバージング接続) : Yのステートまたはその子孫の1つに関する情報が利用可能な場合のみ,接続を通して情報が伝えられる. 事例: 芝生が濡れていること (Y) とスプリンクラーが動作していること (X)を知っているなら,これは, 雨が降っていたかどうかに関する 我々の信念(Z)には影響しない.なぜなら濡れた芝生は,その原因が雨ではなくスプリンクラーだという信念に我々を導く.一方,芝生のステートに関する知識を我々が持たない場合,雨が降っているという観察は,スプリンクラーが動作していたかどうかに関する我々の信念には影響しない.
X と Z の間のすべてのパスについて,次のいずれかの中間変数 Y がある場合,
2つの変数 X と Z は,d-分離である.
X と Z が d-分離でないなら,それらはd-接続である.従属と独立は,知っていること(と知らないこと)によるということに注意せよ. つまり,利用可能なエビデンスが,従属と独立の関係性を決定する際に,重要な役割を演じる.
図1のDAGを考えよう. 上記のルールを用いて,次のことがわかる.
C と L は d-分離である.なぜなら,C と L の間の各パスは,最低1つのコンバージング接続を含む.
図 1: ネットワークの事例 |
ベイジアンネットーワークへの入門で述べたように, d-分離のルールを使用する代案は, Lauritzen et al. (1990)による同等な基準を使用することである: A, B, C が,互いに素な集合であるとしよう.すると,
ここで, A の変数からBの変数へのすべてのパスが Cの変数を含むなら, Cを仮定して,A は Bの条件付き独立である.
翻訳者:多田くにひろ(マインドウェア総研)