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HUGINを用いて食品の商品デザインでの難問に立ち向かう

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この事例は、食品の商品設計(商品企画)の分野で、ベイジアン・ネットワークのテクノロジーがどのように活用できるかを示します。今日の食品市場は、同じ顧客を奪い合うたくさんの競合会社でひしめくグローバル・マーケットです。生き残りのために新製品の開発が不可欠ですが、すべてのイノベーションが成功するとは限らず、失敗すらします。 新製品と顧客の願望との間の適合の欠如が、失敗の重要な原因であると信じられております。顧客が本当に欲しているものに密接にマッチする製品だけに、生き残りの可能性があります。したがって、新製品を開発するときには、顧客の願望からスタートすることが不可欠です。 Corney(2000) によると、ベイジアン信念ネットワークは、食品の新製品設計において、顧客の願望の実現のために活用できます。この事例は、このような目的のベイジアン・ネットワークの実際のアプリケーションについて紹介します。

ベイジアン・ネットワークはどのように役立つか

製品特性と顧客の評価の間の関係性をモデルするのにベイジアン・ネットワークが活用できるかどうかを調査しました。図1に枠組みを示します。このようなベイジアン・ネットワークによって、製品特性のもとでの顧客の嗜好性を予測することが可能になります。ただし、顧客による評価がとても高いという事実をもとに、製品特性の理想的な組み合わせを予測できることが、さらに役立ちます。言い換えると、製品の評価を最適化するために、どの製品特性を調整するべきかを発見することに活用できるわけです。 材料の組成と処理条件、および製品特性の間の関係性をモデルすることができるかどうかが、さらに興味深いことです。

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図 1: ベイジアン・ネットワークでモデルできた関係性

上記の目的のためのベイジアン・ネットワークの使用の価値と実用的な実現可能性が、ケーススタディを用いて調査されました。このケーススタディは、肉の代用に関してです。まず、消費者によって理解される製品特性と消費者による全体の嗜好性の間の関係をモデルすることを試みました。消費者の目では、どの製品特性が重要であるかを調査するために、これが行なわれました。 消費者のデータのみが使用されました。6種類の肉の代用品が調理され、評価のために消費者に提供されました。製品は、調理後のみで評価されました。

この問題を記述するモデルは専門家とともに構築されました。1人の専門家は肉の代用品の分野の専門家で、もう1人は消費者調査の分野の専門家です。このモデル(図 2)は、肉の代用品への態度を示します;製品の外観と匂いが、事前の嗜好性または試食前の嗜好性を決定します。この事前の嗜好性、製品の味と質感は、全体の嗜好性または試食後の嗜好性を決定します。

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図 2: 肉の代用品の評価が、他の変数によってどのように影響されるかを示すベイジアン・ネットワーク

態度に関係する質問は、7ポイント尺度で回答されます。すべての他の質問での回答は、0かた100の連続尺度で与えられます。 パラメータを有効に学習できるようにするために、データは再尺度化されます。Attitude(態度)、Liking before tasting(試食前の嗜好性)、およびLiking after tasting(試食後の嗜好性)は、 -1, 0, 1の3種類の値を得ました。その他の変数は、 1, 2, 3 および 4の4種類の値を得ました。パラメータ学習は上手くいきました。

消費者指向の食品の製品設計の目的は、試食後の嗜好性を最大化することです。試食後の高い評価は、消費者が製品を再び購入するための必要条件です。したがって、試食後の嗜好性が1(最大)であるエビデンスがモデルに投入されました。その事後確率が計算されて、事前確率とともに図 3に示されています。

これらの図から、味がよい(3または4)という確率が、試食後の嗜好性が1であるエビデンスに起因して強く増大することが明らかです。味が製品の全体的な評価で高い影響を持つと結論づけることができます。 これは、ベイジアン・ネットワークを用いて抽出された有用な情報の例です。

最大事後説明関数(MPE)を用いて、最大の試食後の嗜好性に属する典型的な肉の代用品を見つけることが可能でした。このMPEに関する変数の構成は、図 4に示します。ソフトウェアのこの機能は、変数間の非線形な関係についての洞察を得ることを可能にします。知覚科学での関係性はほとんど非線形です[Kvaal & McEwan, 1996] ので、これはベイジアン・ネットワーク・テクノロジーの重要な機能です。

次の課題は、味が試食後の嗜好性に強く影響するとして、どのようにして味を改善できるかです。したがって、本当に敏感な製品属性を含むように左側にモデルを拡張しようと試みました。消費者による味の評価に影響する因子が図 5に示されます。

このモデルのためのパラメータの学習はできませんでした。taste(味)のこれら5つの親変数が、10個の可能な値を持つとして、tasteの条件つき確率表は4 * 105 セルからなります。このような表では、このデータ(250ケース)は、 まばらすぎます。この問題を解決するために、パラメータ化モデル、インスタンスにはNoisy maxモデルを使用することができます。これは将来の調査で行ないます。

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図 3: 周辺確率分布(青)と最大試食後嗜好性に基づく事後確率分布(赤)

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図 5: 消費者によって知覚される味に影響する敏感な属性を示すベイジアン信念ネットワーク

結論

このトピックでの研究は始まったばかりですが、消費者の目で最も重要な製品特性は何かを決定することに、ベイジアン・ネットワークが役立つことはすでに明らかです。次のステップは、どのようにして(消費者の目で)重要な特性を最適化できるかを見つけるために、知覚属性と物性的な製品特性をモデルに含めることです。これはまだ可能ではありませんが、この問題の解決にパラメータ化モデルが役立ちます。この調査によって、さらなる研究が開始されるでしょう。

参考文献

  • Corney D. 2000. Designing Food with Bayesian Belief Networks. In Parmee, I. (Ed.), Evolutionary Design and Manufacture ACDM2000, Springer-Verlag, 83-94.
  • Jongenburger H.J. 2005. Bayesian Belief Networks as a tool for Consumer Oriented Food Product Design. MSc-thesis. Wageningen University, Wageningen, The Netherlands.
  • Kvaal K., McEwan J.A. 1996. Analysing complex sensory data by non-linear artificial neural networks. In Naes T., Risvik E. (Eds.) Multivariate Analysis of Data in Sensory Science, Amsterdam, Elsevier Science.